この記事のポイント
- ヨキッチはメディアデーで「来年サインする」と明言。延長を見送った理由は**「ビジネス」**
- 今夏の延長は4年約2.78億ドル、来夏のFA再契約なら5年約3.6億ドル(いずれも報道ベース)
- 初年度の年俸はほぼ同じ。**差のほぼすべては“5年目”の約8,000万ドル**(サイトの試算)
- ナゲッツ側は「心配はない」。ただし制度上は2027年夏にFAになれる余地が残る
- 延長を見送るのは2年連続。満額より安く延長したブランソンとは逆の選択だ
数字で見るヨキッチの契約(報道ベース)
来夏に結べる5年契約の見込み(約3億5,950万ドル)
今夏に結べた4年延長(約2億7,800万ドル)
5年目(2031-32)の年俸の試算=差のほぼすべて
延長を見送った夏(2025年・2026年)
メディアデーで語った「ビジネス」の一言
2026-27シーズンの開幕を前にした9月28日(現地)、ナゲッツのメディアデーで最も注目されたのは、ニコラ・ヨキッチの契約だった。ヨキッチは今夏、ナゲッツとの延長契約を結ばずにキャンプを迎えている。
質問を受けたヨキッチは「来年サインするよ。向こうが望むならね」と冗談まじりに答え、延長しなかった理由を聞かれると「ビジネス」の一言で片づけた。フロントには自分の考えをずっと率直に伝えてきた、とも話している(NBA.com、NBC Sportsなどの報道)。ナゲッツのベン・テンザー副社長も「心配はしていない」とコメントした。
ヨキッチの気持ちがデンバーから離れているわけではない。7月の時点でも「デンバーで残りのキャリアを過ごしたい」と語っていた(ESPN)。では、なぜ“今”サインしないのか。答えは、契約のルールが生む金額の差にある。
今夏の延長と来夏の再契約、総額の差は約8,000万ドル
報道によると、ヨキッチが今夏に結べた延長は4年で約2億7,600万〜2億7,800万ドル。一方、来夏にいったんFAになってナゲッツと結び直せば、5年で約3億5,700万〜3億5,950万ドルになる見込みで、実現すればNBA史上最大の契約だ(金額の幅はメディアごとのサラリーキャップの見込みの違いによる)。
総額だけ見れば約8,000万ドルの差。ただし大事なのは“どこで差がつくか”だ。報道された総額から逆算すると、どちらの契約も初年度(2027-28)の年俸は約6,200万ドルでほぼ同じになる。現契約の2027-28のプレーヤーオプション(約6,284万ドル)ともほとんど変わらない。
つまり、待ったからといって毎年の年俸が大きく上がるわけではない。差を生んでいるのは契約の長さだ。延長は契約の残り年数と合わせた長さに上限があり、今夏の時点では新たに足せるのが4年までだった。来夏にFAとして結び直せば、自分のチームとは最長5年の契約が結べる。この“1年の差”が、そのまま約8,000万ドルの差になっている。仕組みの基本は「NBAのサラリーキャップ」でも解説している。
今夏の延長と、来夏の再契約の比較
5年目の約8,000万ドルが意味するもの
サイトで、5年約3億5,950万ドル・毎年8%の昇給として年ごとの年俸を試算すると、最終年の2031-32は約8,180万ドルになる。ヨキッチにとっては、36〜37歳になるシーズンの年俸がまるごと保証される計算だ。
ESPNのボビー・マークス氏の試算では、この契約を結べばヨキッチのNBAでの通算受け取り額は約7億2,400万ドルに達する。サイトのヨキッチの契約ページにまとめた2025-26までの受け取り額(約3億477万ドル)に、今季の約5,903万ドルと新契約の約3億5,950万ドルを足すと、ほぼ同じ数字になる。2014年にドラフト2巡目41位で指名された選手としては、異例の数字だ。
30代後半の“5年目”を保証させるのは、どの選手にとっても大きな意味がある。故障や衰えのリスクを球団が引き受けるからだ。言い換えれば、ヨキッチは1年待つことで、キャリアの最後の1年分をあらかじめ確保しようとしている。
ヨキッチの年俸の推移と、来夏の5年契約の試算
ナゲッツ側のリスクと、得なこと
ナゲッツにとって心配なのは、制度の上ではヨキッチが2027年夏にFAになれることだ。オプションを破棄すれば、どのチームとも交渉できる。もちろん本人は残留を何度も明言しており、他チームが同じ5年契約を出すことはできない(他チームとの契約は最長4年)。金額の面でも、ナゲッツと結び直すのがいちばん有利になる。
一方で、ナゲッツにも悪くない面がある。来季の年俸はオプションの金額とほとんど変わらないので、2027-28のサラリー計算はほぼ崩れない。ナゲッツはすでに1stエプロンを超え、2ndエプロンまでの余白は約360万ドルしかない(ナゲッツの2026-27サラリーを読む)。主力の年俸が想定どおりに収まるのは、チーム作りの面では大きい。
気をつけたいのは、シーズン中に「ヨキッチは本当に残るのか」という話題が何度も出ることだ。チームが不振になれば、そうした声は大きくなる。ヨキッチの「向こうが望むならね」という一言は冗談だが、勝ち続けることがナゲッツにとっての最大の“交渉材料”であることに変わりはない。
ブランソンとは逆の選択
スターの契約の選び方は一つではない。ニックスのジェイレン・ブランソンは2024年、もう1年待てばもっと高い契約を狙えたのに、上限よりかなり安い4年の延長にサインした。浮いたお金で仲間を集め、2026年の優勝につなげたことは「ニックスの強さの秘訣」で書いたとおりだ。
ヨキッチは逆に、2025年夏の3年約2億1,200万ドル、2026年夏の4年約2億7,800万ドルと、2年続けて延長を見送り、満額の5年契約を待つ道を選んだ。ただし、初年度の年俸がほぼ同じである以上、ナゲッツのチーム作りに与える影響はブランソンのケースほど大きくない。どちらが正しいというより、制度のなかで“いつサインするか”がこれだけ金額を変える、という好例だ。
ここから先のスケジュール
- 12026年10月〜 2026-27シーズン
現契約4年目(約5,903万ドル)。延長なしでシーズンを戦う。
- 22027年6月29日 オプションの期限
2027-28の約6,284万ドルを行使するか、破棄してFAになるか。
- 32027年7月 FA交渉
ナゲッツとの5年契約が本命。理屈の上では他チームとも交渉できる。
- 42031-32 新契約の最終年(予定)
5年契約ならヨキッチは36〜37歳。キャリアをデンバーで終える形に。
今季の見どころは「契約より、勝てるかどうか」
結局のところ、この話は来年の6〜7月まで大きくは動かない。それまでナゲッツが見せるべきは、ヨキッチが「ここで続けたい」と思い続けられるチームであることだ。
その意味で、今季のカギは周りの選手になる。昨季は故障で33試合の出場にとどまったアーロン・ゴードンは「心も体も整えてきた」と話し、37歳のデマー・デローザンも加わった。プレシーズンは10月4日(現地)のジャズ戦から始まる。ゴードンが健康にシーズンを送り、チームが優勝争いに加われば、来夏の契約はきっと“ただの手続き”で終わる。
ヨキッチの現在の契約の中身はヨキッチの年俸・契約ページ、チーム全体の年俸はナゲッツの年俸一覧で確認できる。来夏に正式な契約が結ばれたら、このサイトで続報をまとめる。